記事に興味をもっていただきありがとうございます。
きなこと申します。
私の職業は臨床検査技師という医療職です。
臨床検査技師の業務は多岐に渡りますが、そのなかに超音波(エコー)検査があります。
乳がん検診で超音波検査をしていると永遠に聞かれる質問。
それは・・・
「マンモグラフィと乳腺エコー、どちらを受けるのがいいですか」です。
答えは「自分で決めてください」となります。
なぜなのか。
それは年齢、乳房のタイプ、費用などで異なり、また両検査にはメリット・デメリット(得意・不得意)が
あるからです。
マンモグラフィ、乳腺エコーそれぞれの特徴を知ることで、どちらの検査が自身に適切かを判断することが
でき、また乳がんの早期発見に繋がります。
マンモグラフィと乳腺エコーのメリット・デメリット
マンモグラフィとは
マンモグラフィとは乳房専用のX線撮影装置(画像診断装置)です。
乳房を板で挟んで圧迫することによって、乳腺が重ならないような状態にした後、X線を用いて
撮影を行います。検査時間は全体で10~15分程度です。
マンモグラフィのメリット
・視触診では分からないしこりや石灰化のある小さな乳がんを発見しやすい(早期発見)
・乳がんによる死亡率減少効果が証明されている。
マンモグラフィのデメリット
・少量の放射線被ばくがある。
・乳房を圧迫するため痛みを感じる人もいる。
・乳腺の発達した若い女性や高濃度乳腺を持つ女性の場合、がんが判別しにくいことがある。
乳腺エコーとは
超音波を発するプローブを乳房にあて、内部からの反射波(エコー)を画像化する検査方法。
検査時間は疾患や状態によって変わりますが10分程度です。
乳腺エコーのメリット
・被ばくのリスクがなく妊娠中でも検査可能。
・検査に伴う痛みがない。
・乳腺の発達した若い女性や高濃度乳腺をもつ女性でも影響を受けにくく詳細に観察できる。
乳腺エコーのデメリット
・検査を行う技師や医師の技術に大きく依存する。
・乳房全体の状態を一度に把握するのが難しい。
・微細な石灰化の発見は苦手。
※高濃度乳腺(デンスブレスト)とは乳腺組織の密度が濃い状態。日本人に多い。
このように両検査にはメリット・デメリット(得意・不得意)があります。
年齢や乳房のタイプなどにより選択できます。
国の指針はマンモグラフィ
厚労省のホームページから乳がん検診の指針を確認すると以下のとおりです。
・マンモグラフィによる検診を原則とする。
・視触診については推奨しない。仮に視触診を実施する場合は、マンモグラフィと併用する。
・超音波検査については死亡率減少効果や実施体制等について引き続き検証していく必要がある。
・対象年齢は40歳以上
・検診間隔は2年に1度
しかし、マンモグラフィですべての乳がんが発見できるわけではありません。
マンモグラフィでは乳腺組織は白く映し出され、とくに高濃度乳腺は強い白色になります。
また、乳がんの部分も白く写るので、発見されにくいのです。
そして日本人女性のおよそ4割が高濃度乳腺といわれています。
一方で乳腺エコーは高濃度乳腺の影響は受けにくい検査です。
なのでマンモグラフィに乳腺エコーを併用するべきでは、という議論がされています。
厚労省による「J-START」試験
・乳がん検診でマンモグラフィと乳腺エコーの併用が有効か検証する国家プロジェクト
・対象は40代女性
・乳腺エコーを併用するグループとしないグループで比較
・現在は参加者の募集は終了し、追跡調査中
→結果が出るのは残念ながら時間がかかります。未来の女性のための調査ですね。
検診にかかる費用
乳がん検診にかかる費用はいくらぐらいでしょうか。
乳がん検診は受診方法によって費用が変わってきます。
①自治体の健診を利用する場合(例:大阪市)
・マンモグラフィ:40歳以上の女性(2年度に1回)で費用は1,500円(クーポン利用で無料)
・乳腺エコー:30~39歳女性(年度に1回)で費用は1,000円
※各自治体によって異なりますのでHPなどで確認してください。
②健康保険組合の制度を利用する
会社で加入している健康保険組合の検診で、マンモグラフィかエコー検査を選べる
ことがあります。費用は無料か、自己負担金1,000円程度のところが一般的です。
これもお勤めしている会社または健保組合に確認してください。
被扶養配偶者も受けれることがあります。
③全額自己負担で受ける
個人事業主の方など、国民健康保険に加入されている方の場合は、人間ドックなどを利用して、
オプションで乳がん検診を追加することができます。その場合は全額自己負担となります。
費用は受診する施設によって異なります。
・超音波検査+マンモグラフィ検査10,000円前後。
・超音波検査のみの場合は4,000円前後
・マンモグラフィ検査のみの場合は5,500円前後
④保険診療で受ける
もし、しこりを感じるなど自覚症状があれば保険診療で受診することもできます。
検査方法は同じようにマンモグラフィと乳腺エコーとなります。
そして必要があればそのまま精密検査を受けることができるのでスムーズです。
・初診料+マンモグラフィ+乳腺エコーが3割負担で3,600円
異常がみつかり精密検査を受けると検査費用が追加される(すべて保険適用)
まとめ
・マンモグラフィ、乳腺エコーにはそれぞれメリットとデメリット(得意・不得意)がある。
・年齢、乳房のタイプにより検査を選択できる。
・国の指針は40歳以上の女性で2年に1回のマンモグラフィ検査。
・しかしマンモグラフィだけでは、乳がんを発見できないこともある。
・乳腺エコーを併用するのが理想だが、客観的なデータは現在調査中。
・検査は何を受けるか、どういう方法で受けるかで費用が異なる。
以上、永遠にされる質問「マンモグラフィと乳腺エコー、どちらを受けるのがいいですか」に対する答えが
「自分で決めてください」の理由となります。
結局、両検査の特徴・年齢・乳房のタイプ・費用などにより、ご自身で決めてもらうことになりますので、
この投稿が参考になれば幸いです。
(余談ですが、40代の私は毎年両方受けています。身内に乳がんが多いので・・・)
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